2022.12.30
十二星座展『ゾディアック イン マイ ルーム』作品紹介②〈獅子・乙女・天秤・蠍〉

こんにちは。TEAVRILの砂川です。
12月15日〜26日に開催されました展示会『ゾディアック イン マイ ルーム』誠にありがとうございました!
前回に引き続き、出展作家の作品紹介をさせて頂きます。
今回は
獅子座・乙女座・天秤座・蠍座
をご紹介します!
〈 獅子座 〉
河山 流
獅子というと個人的なイメージで暖色やエネルギッシュな感じを思い浮かべがちなのですが
緑と青でまとめられた涼しげな作品で、少し驚きがありました!
思えば河山さんの作品はひんやりとした儚げなものが多い印象でしたので、きちんと自分の作風に落とし込んできたなあと感心すると共に、ポップ&ドリーミーなキャラデザに衣装、良い意味でおもちゃのようなキッチュさのある星の表現だったり、童心をくすぐる愛らしさを感じます。
背景のステンドグラスや銀河、ロマンティックな場面が広がっているのもなんとも魅惑的。
そこに差す黄緑の鮮やかさとマットの落ち着いた深緑が絵を囲み、色数を抑えながらもグラデーション的な色相を投影しているのも面白いです。
キラキラと多くのモチーフを取り入れながらも、色を制御して落ち着きのある雰囲気も生み出している。上手いなあ…!
額の素朴さもまた、絵の中心へと視線を引きつけますよね。
散布された白がまた無数の星のよう…*
丹士ゆきひら
私の中での”獅子”のイメージと合致した、王道的なかっこよさと安心感のある作品!
河山さんの獅子座とはまたガラッと対照的なモチーフ遣い・配色で見比べてワクワクしていました。
小さいサイズながらも、デジタル作画と相性ピッタリな洗練された描き味。丹士さんの軽やかな筆遣いが伝わってくるようです。
繊細さとともに、活き活きとした勢いをも感じる作品なので、個人的にはどーんと大きい画面でも観てみたいと思いました!
『レグルスの心臓』というタイトルからも伝わるように、流れる髪が獅子の立髪に同化し一心同体感を演出しています。
胸に当てた掌の炎はキラキラと燃え盛り、まさに星のような煌めき…とても綺麗です。
シンプルな画面ながらも一目見てストーリーを想像できますよね。
今回初めて丹士さんの作品を拝見しましたが、作者は伝える力を持ってる方だなとすぐに感じました。
世界観や設定を作るのがきっと上手なんだなと…もっと色んな作品を観てみたいです。
赤色に差す深い夜空のコントラストが画面を引き締めていますね…!
〈 乙女座 〉
アイラ
前回のパッケージティー企画展示の際にご出展頂いた作品と同じく、青色を全面に配した作品でアイラさんといえば!のイメージが今回また固まったような気がします*
素直でぬくもりのある鉛筆線、こぢんまりとしたサイズ感など
ご自身のこと・好きなものをよく理解して表現し続けているなあと思います。
この安心感が、作家にはとても大事な要素だと思うのです。
肩に鳥を乗せ、花を纏い、月を優しく手に持つ仕草から、慈悲深さがよく伝わってきますね。
よく見ると翼が片方怪我していることから、実は天上にいられなくなってしまった堕天使なのかな…
そう思うと、少し切なげな雰囲気をも感じるような…
地上で静かに小鳥たちと、月に想いを馳せているのかなあ…と、想像するのも面白いですね。
ドローイングにも片翼の折れた天使がいたり、角の生えた少女がいたりと、この子たちの関係性やどんな世界観が広がっているのかとても気になります。
無邪気ながらも表情豊かで、優しく綺麗な滲みの青色によく映えて印象的です…*
Hau
一目みてこれはまさに乙女…!と思い、ふと乙女の定義ってなんだろう?と調べてしまいました…!笑
乙女とは”穢れを知らない女性”(Wikipediaより)それだー!!
女性の柔らかさだったり香りだったり…そんな魅力がダイレクトに溢れた作品だと思います。
Hauさんご自身が女の子が好きなんだろうなあと。
好きだからこそ、この”純真”さを表現できるんだろうなあと思います。
とっても優しくて、凛とした爽やかもあって、一目見ただけで癒される明るく美しい色遣い。
俗っぽく言うと、まさにマイナスイオンを放っている感じ。
透明水彩は色の重なりが美しい画材ですが、逆に言うとプラスプラスしていくと乗算的に鮮やかさが損なわれる欠点もありますので… 彩度の扱いは結構難しい画材だと思います。
が、Hauさんの場合は余白を多く活かし、微妙にニュアンスを変えながら、色を重ねているというよりは”繋げている”印象を受けました。軽やかさと、複雑さの共存ですね。
まさに、”ピュア”を具現化した作風だと感じます。
inui
個人的に乙女座を選ばれたのが意外だったのがinuiさん。
inuiさんの描くモノクロームでシンプルな画風、確かな画力を感じるやや写実的な人物たち。
乙女座といえば”かわいい”や”優しい”というイメージを持たれがちだと思っていたもので、どんな風に昇華してくれるのかドキドキとしていましたが、作品を観て、そうきたかー!と雷を打たれたような気持ちになりました。(この意外性、癖になりますね…)
まさに潔く、Swagな乙女座。
女性性の強いモチーフを選びながらその概念を覆すような、時代的な背景をも投影するメッセージ性の強い作品です。
自我を持って進まんとする、意志の強さをひしひしと感じました。
白黒の画面にギラリと映える星のような箔は、”髪を切る”という行為ともエフェクト的にかかっているようにも感じます。
“切る”音や映像が、擬態化したみたいな不思議な感覚。
ドローイングも強い意志を持っていそうな乙女で、とてもカッコいい…!
〈 天秤座 〉
住
住さんの作品は筆運びだったり、画面に乗る色の動きがとても自由で気持ちいい印象なのですが
今回はそれにプラスしてチャーミングに、ガラスフレームのモダンなイメージも加わって
かわいらしく楽しい作品に仕上がっています!
フレームの特性を活かした、切り抜きや透かしの表現も楽しいですね。
ひらりふわりと舞う髪の隙間を切り抜いたことでますます動きが出て、心地いいリズム感を生み出しています。
ドローイングの『Astroom』というタイトルからも住さんの世界を垣間見れます。
部屋の中に、作者の星への夢だったりロマンだったり、そんな無邪気な憧れが詰め込まれているような…
絵を介して私も、そのときめきに触れることができました。
これはたまたまですが、天秤座スペースの背景にダークブルーの布を配したことで
ガラスフレームの透過部分に、散らばった星々が浮かんで本当の夜空みたいに…!
勝手に嬉しくなった発見でした*
いづこ
いづこさんはご自身が無類の星好きのようで普段から星をテーマに制作されていますが
今回は”天秤座”という星座指定ということもあり… どんな星作品がくるのかドキドキでした*
メイン作品は普段とはまた少し打って変わった、意外性のある暖色遣いも加わって新鮮な印象に!(普段は青が多い印象ですので)
更に、真っ赤なマットで締めてくださったのも新しく、ご本人曰く当店を意識してくださったとのこと…!
(いつもお客さんとしても足繁く通ってくださっているのです…愛を感じて涙)
やはり星といえば空ですから、青が多くなりがちだと思いますが…
十二星座の中でも無機物の”天秤”は学術的な要素ですしアンティークな雰囲気も合うと思うので、この表現は個人的にツボでした!
連なる星の冠がかわいくて印象的で、知的でミステリアスな雰囲気とても素敵です。
ドローイングでは普段の作風で表現されていてホッとします。一度で二度美味しい。
嘉賀吏
印象的な俯瞰構図に緻密な描画に目を奪われます…!
左のうずくまる人物に視線を向けた次には、右上に他の人物の足があるのが目に入り
疑問を持ちながら全体を見渡すと、大きな天秤が!
2人の人物は、この天秤にかけられていたんですね。
それに気付いたときの高揚感が楽しくて、嘉賀吏さんの構図力には胸を打たれました。
まじまじと見てみると人物には翼と輪っかがあり、天使ということにも気付いて、
更によく見ると青い布の上に同化するような蠍が這い寄っているのを見つけて。
まさか… と少しドキドキと頭の中でストーリーを想像していました。
視線の向かう順番をしっかり組み立てて制作されたのかな、と感心しました。
ダイナミックなメイン作品も素敵ですし、裏腹に清らかな・アイコニックなドローイングも美しく、作者の作風の幅をひしひしと感じました。
挑戦的な姿勢がとてもいいですね…!
〈 蠍座 〉
NAKO
額の重厚さと、作者特有の澄んだ描き味の相乗効果がまた素敵な作品です。
NAKOさんの描かれる世界観やキャラデザには神聖な要素を強く感じるので、今回も女神ヘラというモチーフを上手に昇華し自分のものにしている作品を観て、安心と満足感を感じました…*
良い意味で軽さのある絵なのですが、お得意の細やかな服飾と画面のコーナーに配された装飾が厳かな額との境界を取り払ってくれています。
こういった気遣いも、絵と額を一体化させるのに大事な要素だと思います。
蠍の禍々しいイメージと裏腹に、白とグレートーンでまとめられた絵からは冷たく鋭い雰囲気を感じ、
意味深な笑みを浮かべるヘラにはなんだか蠱惑的な印象を覚え…
直接的ではないからこそ、見透かされているような怖さが…。
NAKOさんの描く人物は良い意味で血を感じなくて、人間離れした美しさが溢れているんですよね。
それがとっても魅惑的なのです。
此柁
とても凝った額装に目を向けてみると、象徴的な円状のシルエットが美しく、半擬人化的なキャラクターが印象的な作品です。
今回は動物か、人物か、擬人化か…3つに分かれている感じでしたが、完全な擬人化ではない獣人的なキャラデザで斬新さがありました。
蠍という、虫を獣的に表現するとは…作者の獣愛と、フェティシズムをありありと感じます!
水彩特有の混色を多く取り入れていますが、境界を馴染ませてシームレスにグラデーションにしていく技術は素晴らしいと思います。
モチーフ的に毒々しい色が多いながらも、濁りのないスムーズな水彩遣いはとても美しいですね。
線画がまたとても繊細なので、綺麗な塗りと相俟って完成度の高い画面を生み出しています。
ひとすじの大きな星がただの金色ではなく赤銅のような色で描かれているのも、より視線を奪われるポイントだなあと思いました…!
御菓子屋 花畑
見るからに「蠍の毒」!
この画の強さ、わかりやすさ、作者の”好き”への純真さをひしひしと感じてとてもポジティブな印象を受けますね〜!
なかなかこういったダイレクトで強い作品を当店で扱うことが少ないのでより印象に残りますし、幅をぐんと押し広げてくれるありがたい存在だと思います。
(もしかしたら作者的には場違い的に感じることもあるかもしれませんが、当店の場合公募展であれば全く問題ないですし、面白いので全然オッケー!!)
デジタルのとぅるるんっとした質感が蠍の光沢感ともリンク。
ビビッドで派手な色遣いもまた、おぞましいイメージを演出しています。
背筋が泡立つような危険な香り… 良いですねぇ…!
御菓子屋さんのキャラデザもいつもキャッチーで素敵なので、この蠍さんもどんな方なのか知りたくなります*
少し切なげな表情にもなんだか惹かれてしまう…!
次回は
射手座・山羊座・水瓶座・魚座
をご紹介します!